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裁判への参加に備えて情報収集力と判断力を高めよう! - 日経ビジネス Associe(アソシエ)

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裁判への参加に備えて情報収集力と判断力を高めよう! - 日経ビジネス Associe(アソシエ)
http://www.nikkeibp.co.jp/article/nba/20090507/150739/

裁判員制度が5月21日からいよいよスタートする。
裁判員に選ばれたくない、重責から逃れたいと思う人が大半だろう。
だが、裁判への参加はビジネスのスキルアップに取り組む良いきっかけにもなる。

 2009年5月21日から、裁判員制度が始まります。裁判官に加え、国民から選ばれた裁判員が裁判所での審理に参加するようになります。

 裁判員は選挙人名簿に基づいてクジ引きで選ばれ、裁判官とともに証拠調べを行い、有罪か無罪かの判断と、有罪の場合にはその量刑の判断をします。有罪の判決を出す時には過半数の賛成が必要です。

 実際に裁判員になるのは5000人に1人程度と説明されていますが、いつ自分が裁判員として選ばれるか分かりません。そして、選ばれたら人を裁く立場になるわけです。やはり躊躇してしまうのが普通でしょう。

 だからこそ、裁判員制度に対して、私たちはどのように対応し、考えるべきなのかを整理しておく必要があります。まず、なぜ裁判員制度ができたのか、これまでのいきさつを振り返りましょう。

 日本で裁判員制度が生まれた背景には、裁判官や司法への信頼が揺らいできたことがあります。一般常識から考えると「あれ?」と首をかしげたくなるような判決が下るなど、そもそも裁判そのものが分かりにくく、市民の感覚とのズレが大きくなってきたのです。

 裁判官と市民との感覚のズレが大きくなった原因は、裁判官のエリート性、特殊性にあると考えられています。なぜなら、必要以上に難しい司法試験を突破し、さらにその中の優秀な人しか裁判官になれないという、二重の狭き門をくぐる仕組みがあるからです。

 そうすると、裁判官の考え方はどうしても一般人のそれとは懸け離れたものになりがちです。また、裁判案件の数に比べ、圧倒的に裁判官の人数が足りないため、それぞれの裁判官が自分一人では抱えきれないくらいの案件を処理しているという事情もあります。

 そこで、さすがに社会的な課題となり、日本でも市民から選ばれた人による裁判員制度が導入されたのです。

 しかし、裁判というのは本来、判断しにくいものに対して、多角的に情報を集め、原告と被告、あるいは被告と検事の供述のバランスを線引きし、ある価値観を作り出すシステムです。そして、それを司るのが裁判官であり、総合的な判断のうえで結論を出さなければなりません。つまり、強力な問題解決能力が必要とされるのです。

 専門訓練を受けた裁判官でも難しい判断を、素人である私たち市民が本当にできるでしょうか。それが裁判員制度の最大の問題です。実際、裁判員制度についての問い合わせ窓口に寄せられた質問の過半は、「どのような状況なら、その巨大な責任から逃れられるか」という「辞退の仕方」に関するものです。自分の判断が他人の人生を変えてしまうのですから、及び腰になるのも無理はありません。

 しかも素人が判断するのですから、量刑に迷いが生じますし、ブレも生じます。さらに海外の陪審員の事例によれば、「死刑」か「終身刑」かを迷う時などに、判決に参加した陪審員がPTSD(心的外傷後ストレス障害)に近い症状を示す可能性があります。裁判員になること自体が私たちの精神面のリスクを高めるようです。

とはいえ、デメリットばかりに注目してはいけません。前述の通り、裁判員制度を導入したのは、裁判官に任せきりにしていては私たちの民意が反映されないという問題意識があったからです。

 もともと裁判の起源は、「自分たちのコミュニティーでルール違反を行った人に対して、コミュニティーの中で判断を下し、刑罰を与える」という考え方にあります。ですから、コミュニティーの構成員である市民が裁判に参加するのは、本来は当然なのです。

 では、メリットは何でしょうか。裁判員は基本的に素人ですから、検事や弁護士、裁判官の説明や判断に耳を傾けることになります。これまで法曹界は専門用語を中心にコミュニケーションを取ってきましたが、外部に開かれることで、より分かりやすくなります。これは実に画期的です。

 また、市民である私たちも、司法に対する関心が高まります。実際、ここ1年間、メディアでは様々な形で裁判員制度の是非が問われ、その影響が測られ、そして模擬裁判が行われています。

 裁判員制度から逃げることばかり考えず、いつ裁判員に選ばれてもいいように、常日頃から犯罪や社会問題などに目を向け、知識を広げるきっかけとしましょう。

人事評価は人に対する裁き 裁判員制度に限らず、問題を客観的に捉え、情報を収集し、不完全な中でも自分の意見を決定していくことは、実はビジネスにおいても要求され続けるスキルです。

 例えば、私たちの身近な「人を裁く」例として、人事評価があります。部下を評価するのはもちろん、最近は360度評価が浸透しているので同僚や上司を評価する機会もあるでしょう。この時に必要となるのは、次の3段階のスキルです。

(1) なるべく客観的な情報を多方面から集める。

(2) その情報をなるべく客観的に把握し、かつ合理的に分析し、仮説を作り、判断する。

(3) その結果を分かりやすく相手に伝える。

 私たちは人を裁く時に、どうしても先入観にとらわれ、「好き嫌い」の主観が入り込みます。そして、一面的な情報を集め、バイアスがかかった状態で判断を下しがちです。さらに、相手に不都合なことを伝えたくないあまり、ついつい無難ないい評価をつけようという意識が働きます。このような間違った裁き方をしていては、会社というコミュニティーは混乱し、個々の構成員はおろか、組織全体の成長が妨げられてしまいます。情報収集力を高め、判断力を磨き、そして説明責任をしっかりと果たすことで、コミュニティーは発展していくのです。

 主観のくびきから逃れ、客観的な結論を導き出す。相手の能力や成果に対して、良い点は称賛し、問題点は適切に指摘して是正を促す。このような訓練を日頃のビジネスでしておけば、いざ裁判員に選ばれた時にも、落ち着いて判断できると思います。

より深く理解するための1冊
『日本をダメにした10の裁判』
チームJ 編/日経プレミアシリーズ/893円

若手の検事、弁護士、官僚などが集まって、過去の裁判の正当性を検証し、問題ありと考えられる10件の裁判を糾弾しています。例えば、正規社員の整理解雇を制限する厳しい4要件を示したため、それ以後、企業が正規社員の採用を抑制するようになり、非正規社員が増えたという裁判。分娩した女性を母親とするという古い判例の「一律性」を頑なに守ろうとするため、遺伝子上は親子でも代理母に出産を依頼した場合は親子関係を認めない裁判──。私たちの感覚からすると「あれ?」と思うような、社会に悪い影響を及ぼしていると考えられる裁判を取り上げ、現在の裁判制度の是非を問うています。


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