司法改革はまず死刑廃止から・このままでは日本は監獄化社会に - 死刑に異議ありキャンペーン
司法改革はまず死刑廃止から・このままでは日本は監獄化社会に - 死刑に異議ありキャンペーン
http://www.news.janjan.jp/government/0812/0812110287/1.php
荒木祥2008/12/25
死刑判決や執行の増加に、ドキュメンタリー映画作家の坂上香さんは「人の使い捨て 命の使い捨て 貧困から考える死刑」で警鐘を鳴らした。「犯罪に対する厳罰化と、貧困の自己責任化は、刑事政策と福祉政策の悪化を示す。死刑判決や執行が増加している日本は、社会の監獄化を招いた1990年代に似てきている」という。
欧州諸国や韓国、フィリピンなどでは廃止や執行停止の相次ぐ死刑。しかし日本の死刑執行数は今年、11月末までに10名と、死刑判決の確定者数を上回った(関連サイト:毎日新聞)。また、国連総会は12月20日、106か国の賛成で、加盟国に死刑執行の一時停止などを求める決議を採択した(関連サイト:毎日新聞)。
治安は悪化していると考えられやすい日本だが、統計を精緻に分析すると顕著に増加しているのは報道件数のみだ(浜井浩一、久保大、ほか)。私たちは何となく、重大とされる事件が繰り返し報道されるために、凶悪犯罪が増えていると思い込んでしまっている。
「世論は厳罰化を求めている」という錦の御旗によって、裁判では厳罰化の流れが加速し、廃止や停止国の増加にも関わらず死刑執行を続ける日本。それでいいのか、と問う「死刑に異議ありキャンペーン」は、12月14日、東京で「人の使い捨て 命の使い捨て 貧困から考える死刑」を開催し、人々に死刑反対などを訴えた(於:お茶の水・明治大学リバティタワー)。
再審によって死刑の冤罪を晴らした免田栄さん
シンポジウムではゲストとして、再審で冤罪の無罪から生還した免田栄さん(免田事件)も発言した。免田さんは「人が人を裁いて死刑を選択して良いのか。司法改革はまず死刑廃止から」と訴え、無罪確定後も地域社会の偏見が絶えず、犯罪容疑者に対する日本社会の偏見が根強いことを明らかにした。
反貧困活動で活躍している湯浅誠さん(自立生活サポートセンター・もやい)は「人間は環境が変化すれば変わる。反貧困活動を通じて、家を失った人たちが支援で変わることを確認してきた」といい、「死刑は、犯罪加害者の未来だけでなく、被害者の未来をも閉ざす」とビデオ・メッセージで指摘、加害者の更正を見届けることが犯罪被害者の権利ではないかと語った。
国連など国際的な批難にも関わらず日本の死刑執行や、死刑判決が増えている背景には、「世論は犯罪の厳罰化を望む」とする刑事司法の流れがある。しかし、ドキュメンタリー映画作家・津田塾大学准教授の坂上香さんは「犯罪に対する厳罰化と、貧困の自己責任化は、刑事政策と福祉政策の悪化を示す」といい、死刑の増加する日本では拘置所や刑務所の収容人員も増える傾向にあることを指摘、「アメリカの2、30年前の状況と似てきており、監獄化社会になってきているのではないか」と語った。
今や成人の100人に1人が収監あるいは服役しているアメリカは「監獄化社会(プリズン・ネーション)といわれる。1976年までは死刑の執行を全米で中止、1972~75年は判決も少なく、83年までは死刑の執行もごく少なかった。ところが薬物取締りの強化などにより、1984~91年は死刑が微増し、99年までは激増、その後、00年からは減少している。
坂上香さんの資料:全米では死刑判決・執行の増加と共に、貧困の自己責任化や社会の監獄化がすすんだ
死刑が増え、収監者、服役者が増えた間、アメリカでは福祉政策が後退し、貧困を自己責任視する風潮が強まった。と同時に、マスメディアによって、あたかも、貧しい人々や移民が治安を脅かしているという幻想が定着した。犯罪は、凶悪なイメージによって報道されることが多くなり、社会も厳罰化を望むようになった。
成人の100人に1人が収監か受刑されているアメリカでは、結果として、刑務所を委託された民間業者や、部品の生産などを刑務所に委託している大企業が多大な利益を得て、悪いことに刑務所の外では貧困の固定化も招いた。そして2008年の大統領選挙まで、政治家は福祉や医療政策の貧困の責任を問われることも少なかった。
そのような諸問題を指摘した上で、坂上香さんは「いま日本社会は、貧困を固定化し、受刑者を増やそうとし、貧しさを自己責任化しようとしている。1990年代のアメリカに似ていて、危険。このままでは監獄化社会になってしまう」と訴えた。フィリピンの死刑停止状況を報告したトレーシー・バビコさん(フィリピン人権情報センター/PhilRights)は「死刑は、犯罪抑止にも被害者救済にもならない。本当に必要なのは修復的司法(※)だ(※ 修復的司法:犯罪加害者が、被害者との対話を通じて反省を積み重ねるプロセス・アメリカなどで徐々に導入されてきており、再犯防止に効果が高い)。
「人の使い捨て 命の使い捨て 貧困から考える死刑」では、ピーター・バラカンさん、雨宮処凛さん、辛淑玉さんもビデオ・メッセージで、死刑の廃止と貧困問題の解決などを訴えた。パネリストの今野晴貴さん(NPO法人POSSE)も「視聴者が警察官や検察官、裁判官のような気分になる」犯罪報道のあり方を批判し、「このままでは、貧しいのは自己責任、貧しい人は犯罪予備軍、派遣労働者も犯罪予備軍、と多くの人が考えてしまう」と、マスコミや視聴者に警鐘を鳴らした。
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