終身刑創設案 拙速避け議論深めねば(5月26日)
終身刑創設案 拙速避け議論深めねば(5月26日)
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/95004_all.html
死刑と無期懲役のギャップを埋める刑を創設する論議が高まっている。
「量刑制度を考える超党派の会」が与野党六党の国会議員で設立された。
一年後の裁判員制度をにらみ、原則として仮釈放のない終身刑の導入や、無期懲役刑の仮釈放禁止期間の延長などを検討する。議員立法で関係法令の年内改正を目指す。
「無期懲役」となっても、現行法では、仮釈放が最短十年で認められる。死刑との差があまりに大きい。以前から、研究者が間を埋めるさまざまの刑罰を提案してきた。
過去に法制審議会で中間の刑を論議したが、まとまらなかった。拙速は避け、専門家や現場の声も聞きながら、論議を深めてほしい。
「超党派の会」には死刑存置派から廃止派まで入った。死刑の是非については議論しない。
廃止派が存置派に呼びかけて結成した。背景には、厳罰化の風潮が強まる中で、死刑の判決や執行が急増していることへの危機感がある。
終身刑を設けると、裁判に誤判があったときに、救済できる。仮に死刑を執行されていたら不可能だ。
また、長い時間をかけて受刑者とさまざまの人が面会することで、犯罪の原因や背景などが解明され、再発を防ぐ材料にもできる。
裁判員制度で、国民から選ばれる裁判員が死刑か無期かで悩んだ時の選択肢を広げることにもなる。
問題もある。一つは出所の望みがない受刑者の更生を図ることの難しさだ。終身刑は受刑者を自暴自棄にするとも言われる。
説得力に欠けるが、法務省は「死ぬまで刑務所の外に出られず、死刑より残虐」という立場だ。
新しい刑をめぐって、国会議員の中には、仮釈放はないが、恩赦はある「重無期刑」を求める意見も出ている。
近年、被害者や遺族の感情を反映して仮釈放の時期が遅くなり、実態として、無期懲役が終身刑に近づいている現状も無視できない。
二〇〇六年に仮釈放された無期懲役囚(三人)は平均二十五年間、服役していた。すでに五十年を超えている無期懲役囚が数人いる。
こうした実態をふまえないと議論が上滑りになりかねない。
仮釈放や恩赦の余地が全くない終身刑にするか、多少でもある制度にするかも一つの焦点だろう。
過去の法制審では、裁判所が無期懲役の言い渡しをするときに、裁判所の裁量で、仮釈放が可能となるまでの服役期間を二十年とする権限を認める案も論議された。
長年の論議を生かしつつ、国民が納得する刑罰を工夫したい。


