支局長からの手紙:選ばれたなら /滋賀
支局長からの手紙:選ばれたなら /滋賀
http://mainichi.jp/area/shiga/letter/news/20080526ddlk25070169000c.html
会合が始まって既に1時間。なかなか進みません。自治会の役員選考。選び方をどうするか、という“入り口”で堂々巡りの議論になりました。自発的に名乗りを上げた人も少数いましたが、「仕事が忙しい」などと断りの理由が出て、2時間たっても結論が出ず、後日仕切り直すことになり、結局は無難なくじ引きに落ち着きました。しかし、これでも不満を持つ人もいました。PTAの役員を決めるのも似たような状況とよく聞きます。
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国民が裁判に加わる裁判員制度の開始まで1年を切りました。参加するのは、殺人や放火、誘拐など重大な刑事裁判に限られ、裁判官と一緒に、罪に問われた被告が有罪か無罪かを判断し、有罪の場合は刑罰の重さを決めます。
その裁判員の選び方は、20歳以上の有権者からくじで行います。一つの裁判に原則6人。12月ごろまでに翌年1年間の裁判員候補者を選び、計算では4160人に1人の割合で選ばれるといわれています。
この制度でも選ばれた人が仕事や家庭の事情などから辞退を希望すればどうするか、が早くから論議されていました。最高裁は辞退が考えられるケースをまとめていますが、個々の対応に差が出ると、不満が出て制度の根幹そのものが揺らぎかねません。
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さらに、実際に裁判に参加した際の心理的負担の大きさが指摘されています。先日、最高裁が裁判員制度に関する全国意識調査の結果を公表。参加したい4・4%▽参加してもよい11・1%▽あまり参加したくないが義務なら参加せざるを得ない44・8%と「参加」は60・3%(滋賀は59・0%で近畿6府県では5番目)、義務でも参加したくないと答えたのは37・6%でした。厳密に言えば、参加に前向きという人は15%程度という情勢です。
その主な理由は、責任の重さと思われます。被告が冤罪(えんざい)を訴えた場合は有罪無罪の結論を出すのに迷うでしょうし、特に死刑か否かを判断するとなると、責任感が強い人ほど深刻に悩むでしょう。県内の法曹関係者と話した際、テレビから流れる感情的なコメントに裁判員が影響を受けるのが危険とも指摘していました。
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不安要素を挙げるとキリがありませんが、大きな司法改革だと言えます。選ばれたならどう臨むか、今から心の準備が求められます。専門性が高くて閉ざされがちな司法界のプロの中に市民感覚が生かされる制度にすることができれば、この国がまだ手にしていない成熟した市民社会への一歩ともなるのではないでしょうか。【大津支局長・小林成明】
毎日新聞 2008年5月26日 地方版


