Top >  死刑制度関連ニュース >  法の狙いはズレていないか? 市民の司法参加に必要な条件(CSR解体新書36)

法の狙いはズレていないか? 市民の司法参加に必要な条件(CSR解体新書36)

powerd by 楽市アド360

法の狙いはズレていないか? 市民の司法参加に必要な条件(CSR解体新書36)

http://business.nikkeibp.co.jp/article/person/20080407/152369/

 前回はエイプリルフールということで、嘘を書いたわけではありませんが記事に少し仕掛けを施してみました。米国の「差別陪審」に関して「罪刑法定主義」という日本語の訳語を使われたのは、実は刑法の團藤重光教授なのです。以前そのご教示の通りに、私の名前で話をしたところ、法律関係者と思しい人から、上からの物言いで指摘を受けました。何か言い間違えたかな、と慎重に準備し直して、もう一度別のところで試してみると、やはり同様の反応がある。これは…ということで、「四月馬鹿」のオンエアで試してみたわけですが、いかがだったでしょうか?

「差別陪審」と罪刑法定主義の精神

 2007年2月10日、私はNHK・BS番組「地球特派員」の取材で米国ノースカロライナの州都ラレイで行われたHK on JS(Historic Thousands on Jones Street)というデモ行進と集会に参加しました。Kというのは1000人で「キロ」だそうです。実際5000~6000人ほどの人が集まっていました。そこで北米東海岸中南部のノースカロライナ州などでは、現在も黒人層やヒスパニックに対する差別が白人中心の陪審を大きくゆがめてしまう現実を知りました。

 レイプや殺人などの事件で、前科があったり、素行不良だったりする容疑者が、不十分な証拠で逮捕され起訴されることが少なくない。それが陪審裁判で裁かれ有罪を宣告されて、刑に服している。たまたま物証が残っていたケースでDNA(デオキシリボ核酸)鑑定などを行うと、次々と冤罪が判明する。しかし決定的な物証がないまま無実を主張している受刑者も数多い。ここには法による支配rule of lawが成立しておらず、憲法に保障された人権が蹂躙されている。こういう主張がなされていました。

 帰国してからこの「差別陪審」の問題をめぐって国内の先生方にお話を伺いました。上智大学のホセ・ヨンパルト名誉教授は「法治」が成立していない状況は「人治主義」で、法治国家A constitutionalstateが実質的に崩壊していると説明されました。ここで「差別陪審は罪刑法定主義の根幹を危うくする」と指摘されたのが團藤先生でした。

 差別陪審でも、見かけ上はいわゆる法の手続きとしては正当とされる手順due processが踏まれています。しかし白人層の多い陪審員の黒人やヒスパニックの人々に対する人種的偏見に基づく誤謬で、無実の人が罪に陥れられてしまう状況が社会に固定化している。この状況は罪刑法定主義の根幹を危ぶむものと團藤先生は言われ、このように続けられました。

 「最近の若いひとは法解釈ばかりやって法の精神を全く理解していない。もちろん解釈学はとても大事だ。しかし法には表面に表れる以上の精神がある。文化としての法を、大学も刑法学者も全く分かっていない」

 (正確な一言一句は違うかもしれませんので、本稿も團藤先生にチェックしていただいてからオンエアしています。ただし、本文中にあるかもしれないミスはすべて伊東の文責によるものです)

 米国の差別陪審は一見遵法的な手続きを踏むように見えながら、恒常的に冤罪をつくり続けている。ここで問われるのは法治の根幹であること、そして「罪刑法定主義の精神」への深い理解の大切さを、團藤先生は強調されました。

 そこでご紹介があったのが、先週引用したチェザーレ・ベッカリーアの原典です。

 ベッカリーアの名を挙げながら、團藤先生は、現在日本への導入が急がれている「裁判員制度」が、いかに民衆の内部からわき上がってきたものでないかを説かれました。

 何らかの理由で役所と学者が考えついて、木に竹を接ぐように作られたものであること、その不用意な運用は容易に法治国家日本の罪刑法定主義の根幹を揺るがしかねないこと、法の解釈に当たっては、必ずしも文字で書かれない、その精神を理解することが決定的に重要であること、しかしそれが簡単に忘れられたり、別のものにすげ替えられたりすること、などなどなど。こうした批判に続いて、刑罰の「比例原則」が成立し得ない不可逆的な死を刑法は宣することができない、という團藤教授の死刑廃止論の議論になりました。

 ちなみに、團藤先生ご自身が死刑廃止論を説かれると、廃止論者の聴衆は当然、大いに賛同します。そんな時、存置論者や態度を決めかねている人は、微妙で畏れ多げに沈黙して、その場の時が過ぎます(そういう場に幾度か居合わせる経験があります)。そこで述べられるのとほぼ同様の内容を、法の素人である私が言うと、「だから素人はダメだ」といった風情の指摘をほぼ確実に受けます。

 同じことを言っても、発言者によって態度が変わるとすれば、これは科学的なやり取りとは言えません。そうした議論は学術ではなく、権威を背景とする根拠のない駆け引きになってしまいやすい。それに注意したいのです。


法廷は根拠のない駆け引きでよいのか?

 今、法の素人の市民が審理に参加しようという現在日本の状況下で「普通の法律関係者」が状況をどう捉えているか、法律家が市民を上から見下したりしていないか、そういった検証が目の前でシミュレートできるかな、と思って、エイプリルフールの企画を考えてみました。もちろん、すべての文責は私にあり、瑕疵や誤謬があればどうかご指摘いただければ幸いです。謙虚に伺いたく思います。

 私がわざと交ぜたのは、例えばベッカリーアの「原則」に照らせば市民裁判員の模擬法廷で重罰判決が出る傾向は「誤判」など、見る人が見れば反応しそうなフレーズです。言うまでもなくベッカリーアの原典は日本の現行法ではないのだから、「誤判」という表現は強すぎます。一番のひっかけは「罪刑法定主義」そのものと、必ずしも明文化されていない「罪刑法定主義の精神」とを同じように記したことで、こういう書き方をすると「概念を理解していない」「複数の概念を混同している」などと指摘されることが多いです。

 しかし、ここでちょっと考えてみていただきたいのです。

 2009年以後、市民裁判員に選ばれる普通の人々で、いったいどれだけの人が、各種の概念を正確に理解しているでしょうか? あるいは裁判員裁判の開始後、判決を下した後で裁判員経験者を調べてみて、こういった概念をきちんと分別理解して審理に加わったひとが、どの程度いると期待できるでしょう? 

 法務省自身は、そんなことは考えていないように見えます。

では、法廷でのやり取りは、素人相手の根拠を欠く、こけおどしのようなやり取りでよいのでしょうか

スポンサードリンク

         

死刑制度関連ニュース

死刑制度関連ニュース 死刑制度関連の社会の動き、出版、書籍、TV報道、外国の動き 死刑廃止団体の動向

関連エントリー

「死刑執行告知は数日前に」 東京拘置所視察委が意見書 - 社会 昨年、中国の死刑執行3.5倍に 国際人権団体報告 被害者遺族らが死刑「冷静判断」訴え…都内でシンポ 菅家さん 死刑廃止を訴え 民主党勉強会に参加 裁判員制度と死刑制度 議論白熱 下京でシンポ 弁護士や僧侶 警察・検察はお墓に出向くか 足利事件17年ぶり釈放 "裁判員制度"が始まる今こそ注目 死刑執行を克明に再現した『休暇』 ドラム缶殺人など4人の死刑執行 英国・死刑廃止議連会長のカーマイケル氏が来日 米国:ニューメキシコ、死刑廃止法案を可決--米で2州目 死刑命令書を全面開示 宮崎元死刑囚「執行せよ」 米各州で死刑制度廃止の動き、経費削減のため イランが刑法修正へ、未成年犯罪者の死刑を難しく 痛いニュース(ノ∀`):高校生「死刑制度は廃止すべき、終身刑を採用すべきだ」…毎日新聞 4人の死刑執行、法務省発表 アムネスティニュース~死刑の執行に抗議する 司法改革はまず死刑廃止から・このままでは日本は監獄化社会に - 死刑に異議ありキャンペーン 死刑執行・氏名を公表 法務省、突然の変更 死刑執行の一時停止、決議案を2年連続採択 国連委 麻生内閣初の死刑執行 福岡2女児誘拐殺害と福島母娘強殺の2死刑囚 「裁判員制度」でJR 9条連などが勉強会 10/31 国連自由権規約委、日本に死刑廃止を勧告 鳩山法相、死刑執行は死に神ではなく「文明」 連続幼女殺害事件の宮崎死刑囚ら3人、刑執行 仮釈放ない終身刑創設へ、議連が改正案に向け合意 「死刑増加」日本を批判=アムネスティ報告書 裁判傍聴者ら「もし自分が裁判員だったら」 死刑は「支持」判断「自信ない」 終身刑創設案 拙速避け議論深めねば(5月26日) 量刑判断が素人にできるか。裁判員は世間の感情に悪のりした制度である 量刑議連発足、終身刑の早期創設へ 「事実上の死刑廃止」と保守派は反発 死刑めぐる鳩山法相の国会答弁、EUが異例の抗議文 裁判員に選択の幅 「終身刑」議連創設の狙いは 加藤紘一会長に聞く 死刑執行の音声に反響 : TV 演劇:冤罪と裁判員テーマに 「砂喰社」オリジナル、あすから浜松で上演 /静岡 日本キリスト教協議会、死刑執行に対する抗議声明を発表 国連人権理が初の対日審査、12カ国が死刑制度廃止など求める 文化放送が特番『死刑執行』 実情知り『存廃』議論を 終身刑:創設目指す超党派議連の準備会合に35人参加 文化放送「死刑執行」テープ放送…賛同6割、批判2割 裁判員制度最高裁制作のPR映画「審理」上映、市民130人学ぶ : 福岡 死刑の瞬間を放送=53年前の録音-文化放送 死刑賛成派も反対派も「終身刑を」 超党派で議連発足へ 米国:「支払えなければ、生かしておくように」と裁判所 【あなたはどう裁いた?】歌織被告に「無期・死刑」が最多 厳罰求める傾向が顕著 【自由記述への意見】「裁判員制度を考える契機になった」「『法廷ライブ』読むうちに考え方変わった」 DNA鑑定でまたも冤罪晴れる=全米で200件以上、死刑囚も 明日への伝言:昭和のあの日から 勝田元死刑囚と刑事 取調室の1年3カ月 死刑:テレ朝も執行前後のテープ放送 裁判員制度を前にテレビ報道を危惧する 「終身刑導入」自民に勉強会設置へ 光市判決、「主張の全否定はショック」と元弁護人 死刑制度:改善求める会長声明--県弁護士会 /岐阜 あなたは死刑判決を下せるか:決断への条件は? / 今週の世論調査 死刑「全員一致」に限定 廃止議連が終身刑法案 「死刑確定後も上訴制度を」日本に求める マレーシアで秘密処刑が存在?アムネスティが報告 死刑執行抗議声明 アムネスティ・インターナショナル日本 死刑:薬物注射による執行は合憲 米最高裁 50年前の死刑執行の瞬間をラジオ放送 関東で5月6日 「死刑を迫られる日」はすぐそこまで来ている 中国の死刑執行、大幅減 五輪開催意識か [裁判員制度]なお慎重さを求めたい 中国、470人を死刑に=07年執行数、半減も世界最多-アムネスティ 死刑執行、適正に判断=町村官房長官 始まる裁判員制度:模擬裁判、企業の休暇制度…準備着々 まだ抵抗感強く ド素人の多数決で「感情裁判」時代がやってくる? ~『つぶせ!裁判員制度』井上薫著(評:荻野進介) 死刑執行に廃止議連が抗議/「機械的処刑、許せない」 死刑制度:仏教の教えに基づき、廃止考えよう--13日、下京で /京都 日本、5カ月で10人に死刑執行 死刑執行に強く抗議する(談話) 4人の死刑執行 鳩山法相 4カ月で計10人 死刑廃止:考えよう 13日に京都・大谷婦人会館で集会 /大阪 法の狙いはズレていないか? 市民の司法参加に必要な条件(CSR解体新書36) 死刑問題にゆれるカリブ海諸国 米バージニア州が死刑停止 連邦最高裁の合憲判断待ち 洛書き帳:「叫びたし 寒満月の 割れるほど」… /京都 映画「休暇」で、謎に包まれた死刑囚・金田役を演じる西島秀俊 死刑執行文書、開示せず 正義のかたち:裁判官の告白/7 死刑への信条、正反対に変化 社説:袴田事件 生死の問いかけに向き合おう - 毎日jp(毎日新聞) 袴田事件:再審棄却 「新証拠無視された」 死刑囚案じ不安と落胆 小林薫主演「休暇」、地元山梨県先行公開が好調に推移 日本人は「死刑」をなぜ支持するのか?~『死刑』森達也さん【後編】 (我ら、文化系暴走派) 誰かを「死刑」にすると言えますか~『死刑』森達也さん【前編】 (我ら、文化系暴走派) 韓国 再び火が付いた死刑存廃論議 デモ行進:死刑反対訴え 鳩山法相は「粛々と執行」--久留米 /福岡 講演会:芥川賞作家の辺見さん、死刑制度テーマに--千代田で来月5日 袴田事件と改正・刑事訴訟法281条の関係 死刑判決:「人を裁く」とは? 永山事件の裁判官が初告白 FLASHで死刑囚の特集展開 反響を呼ぶ - Ameba News [アメーバニュース] 死刑執行、15%を許可せず=「猶予付き」が上回る-中国最高裁 ナイジェリア:司法制度の見直し後もなお死に怯える受刑者たち 死刑執行、その瞬間は…元刑務官が激白 国会開会中に3人死刑執行 極めて異例 死刑廃止を巡る動き 2007/10月 死刑執行停止求める決議案提出 EUなど72カ国 3人の死刑を執行 長勢法相命令、計10人に 死刑廃止決議、国連で採択! 死刑制度  問われる 命の重さ() 死刑廃止へ終身刑創設 超党派議連が法案提出目指す '08/2/10 死刑になりたいと男性襲う-東京都新宿区のトイレ(2/16 14:04更新)


お気に入りに追加
My Yahoo!に追加 Add to Google
スポンサードリンク
ランキング
  • 死刑廃止問題を考える 関連情報
  • 死刑廃止問題を考える 関連情報2

  • 人気ブログランキング【ブログの殿堂】
    • seo

    TAGGY
    タグで横断検索

    powered by TAGGY
スポンサードリンク